老ナルキソス

トリプルアップ配給協力作品

2023年5月20日（土）より新宿K's cinemaほか、全国順次ロードショー！

企画意図（監督：東海林毅）
パートナーシップ制度は「ある」が同性婚はまだ「ない」、そんな現在の日本社会に生きる男性同性愛者たちの「家族」にまつわるストーリーを、長い時間を同性愛者として生きてきたナルシストの老人・山崎（田村泰二郎）と若く美しいウリセンボーイのレオ（水石亜飛夢）、ふたりの個人的な関係の中に描きました。

年老いた同性愛者であり、まだ「ゲイ」という呼び名もない時代から日陰者として社会の方隅で生きてきた山崎、（差別や偏見との闘いの時代を経て）すでに性的マイノリティが可視化された"LGBT世代"のレオやパートナーの隼人（寺山武志）、同じ同性愛者でもそれぞれの世代の社会的背景によって考え方も人生の選択肢も変わってきます。一見社会とは無関係に思える恋愛や別離といった個人的なでき事も同性愛者の場合はそれぞれの時代の社会制度や偏見などに大きく影響を受けます。だからこそ、この「老ナルキソス」では同性愛者の個と社会の関係を丁寧に接続して描きたいと考えました。

田村泰二郎（73）長編初主演
また異性愛中心の社会において差別や排除の対象となる「同性愛者としての性的な思い出や体験」を長年にわたって受け止めてきた山崎の肉体は映画の中でも特別な意味を持ちます。アングラ演劇や暗黒舞踏を通して長年にわたり身体表現を行ってきた田村泰二郎さんの肉体を借りて、「身体に刻まれた感情」を表現しました。
 

ゲイでナルシストの老絵本作家・山崎（田村泰二郎）は老いて醜く衰えゆく自分の姿に耐えられない。作家としてもスランプに陥り苦境に喘ぐ山崎はある夜、若く美しいウリセンボーイのレオ（水石亜飛夢）に出会う。若さに執着する己の醜さを恥じた山崎はビルの屋上から身を投げようと試みるが間一髪レオに助けられる。これまで自分のことだけを愛してきた山崎はレオに初めての恋心を抱き、幼いころに父親を亡くしたレオは山崎に父親の面影を重ね合わせる。こうしてすれ違いを抱えたまま二人の関係が始まる。

頻繁に会うようになった二人は徐々に互いのこれまでの人生を知り距離を縮めるが、レオが山崎を恋人として見ることはない。山崎はレオの気を引くために癌を患っていることを告白する。素直な性格のレオは老い先短い山崎に同情し、願いを叶えたいと申し出る。山崎はレオと共に忍（日出郎）や島田（モロ師岡）ら昔のゲイ仲間を訪ね歩くことになる。山崎は自分だけでなくかつての仲間たちが寂しく老いている現実を見る。レオの目にそれは未来への不安として映る。そんな折、レオは同棲中のパートナー・隼人（寺山武志）から正式にパートナーシップ制度や里親制度について考えたいともちかけられる。しかし幼くして父を亡くし、母とも疎遠なレオは「家族」という感覚が分からずに困惑する。

山崎の元にかつてのパートナー・立川幹夫（村井國夫）の消息がもたらされる。意を決してレオと共に立川を訪ねた山崎は、立川が女性と結婚し子供までいる事を知る。絶望した山崎は、レオに養子縁組や財産分与をちらつかせて暴力的にすがりつくが拒絶されてしまう。ショックで倒れた山崎は再びレオにより助けられる。

遂に独りになった山崎は自らの醜さを受け入れ過去と決別し、彼自身のライフヒストリーを紡いだ新作絵本を描きあげる。完成した絵本は立川をはじめこれまで山崎の傍にあった人々や新たな人生を歩み始めたレオとそのパートナーの元にも届く。
山崎は今日も懲りずに男漁りに出かけるがその表情には生の悲哀と喜びが溢れていた。

 

田村泰二郎、水石亜飛夢、寺山武志、千葉雅子、モロ師岡、日出郎

田村泰二郎（山崎薫）
山口県出身。アルファエージェンシー所属。大学卒業後「状況劇場」に所属。名バイプレーヤーとして「太陽」（2005年／アレクサンドル・ソクーロフ監督）や「そこのみにて輝く」（2014年／呉美保監督）など数々の映画に出演している。今作が長編映画初主演となる。2022年7月より五十嵐匠監督作品「島守の塔」順次公開中。

水石亜飛夢（レオ）
神奈川県出身。STRAIGHT entertainment所属。2012年ミュージカル「テニスの王子様2ndシーズン」でデビューし、2020年「魔進戦隊キラメイジャー」キラメイブルー／押切時雨役でレギュラー出演し、注目を集める。主な映画出演に「餓えたライオン」（2017年／緒方貴臣監督）、「あなたの番です。」（2021年／佐久間紀佳 監督）「鋼の錬金術師」（2017年／2022年／曽利文彦監督）など。2022年9月より短編映画「ほどけそうな、息」（小澤雅人監督）が公開。

寺山武志（大木隼人）
愛知県出身。EFFECT所属。舞台を中心に活動しミュージカル「黒執事」（2013年～2018年）、舞台「呪術廻戦」（2022年）などに出演。主な映像出演作に「テレビ演劇サクセス荘」（2020年～2021年）、「モンスターライフ」（2019年～）など。

千葉雅子（荏子田信子）
東京都出身。ザズウ所属。劇団「猫のホテル」主宰。1991年「プレシャスロード」にて脚本家デビュー。以後、猫のホテルのほぼ全作の脚本を手掛けるなど、作・演出・役者として幅広く活躍。主な映像出演作にTVドラマ「医龍TEAM MEDICAL DRAGON」（2006年）、「マルモのおきて」（2011年）など。映画出演作は「ブラック会社に勤めているんだが、もう僕は限界かもしれない」（2009年／佐藤祐市監督）、「エイプリルフールズ」（2015年／石川淳一監督）、「彼女未来」（2021年／山西竜矢監督）など。

モロ師岡（島田）
千葉県出身。オレガ所属。北野武監督作品「キッズリターン」（1996年）で東京スポーツ映画大賞助演男優賞を受賞。主な映像出演作にTVドラマ「古畑任三郎」（1999年）、「白い巨塔」（2019年）、「下町ロケット」（2018年）、映画出演作に「ラヂオの時間」（1997年／三谷幸喜監督）、「シン・ゴジラ」（2016年／庵野秀明総監督）など。2022年9月より映画「てぃだ いつか太陽の下を歩きたい」（中前勇児監督）、「グッバイ・クルエル・ワールド」（大森立嗣監督）、「ある役者達の風景」（沖正人監督）が公開。

日出郎（忍）
京都府出身。オンリーユー所属。1982年にショーダンサー界に華々しくデビュー後、その活躍の場をテレビ界にまで広げた1990年代バブル景気時代を代表するレジェンドおねぇタレント。1980年代後半より「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」や「笑っていいとも！」へのレギュラー出演のほかタレント以外にも舞台俳優や歌手として精力的に活動の場を広げている。主な映像出演作は「メグライオン」（2020年／河崎実監督）など。

 

監督・脚本：東海林毅

音楽：渡邊崇
プロデューサー：須田敬介、伊藤正美、有馬顕、東海林毅
撮影：神田創、一坪悠介、渡辺一平、中尾正人
照明：丸山和志
録音・音響効果：佐々井宏太
美術：片平圭衣子
編集・VFX：東海林毅
ヘアメイク：東村忠明
スタイリスト：福本紫織
助監督：小池 匠
キャスティング：伊藤尚哉
ラインプロデューサー：石塚洋平
制作担当：石川真吾
ロケーションマネージャー：上野遼平
アシスタントプロデューサー：濱垣 遥

協賛：ヨコシネDIA
製作：老ナルキソス製作委員会（オルタナ、dexi、エル・エー、みのむしフィルム）
制作プロダクション：エル・エー
配給：オンリー・ハーツ
営業：トリプルアップ

挿入歌「ブルジョワの嘆き（Les Bourgeois）｣（詞：ジャック・ブレル、歌：井関真人）

 
© 2022 老ナルキソス製作委員会