私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰だ?
トリプルアップ配給協力作品
2023年10月20日(金)よりBunkamuraル・シネマ渋谷宮下ほか、全国順次ロードショー!
イザベル・ユペールが、仏総合原子力企業アレバ(現オラノ)社のCFDT(フランス民主労働組合連盟)代表モーリーン・カーニーを演じる国家的スキャンダルを背景にした社会派サスペンス。
会社とその未来、そして従業員の雇用を守るため、中国とのハイリスクな技術移転契約の内部告発者となったモーリーンが、自宅でレイプされるという肉体的、精神的暴力と、それを自作自演だとする精神的暴力に対し、屈することなく6年間闘い続け、無罪を勝ち取るまでを描いた実話の映画化だ。
監督は、これまでもイザベル・ユペール主演作品「ゴッドマザー」(2021)を手掛けたジャン=ポール・サロメ。彼は、レイプ事件後のモーリーンに寄り添い、警察も見出すことのできなかった事実を探し出して無罪に導いた仏雑誌「L'Obs」の記者カロリーヌ・ミシェル=アギーレの著書「LA SYNDICALISTE:組合活動家」に出合い、本作の企画を立ち上げた。脚本は「ローズメイカー 奇跡のバラ」(2021)のファデット・ドゥルアール、撮影は「1640日の家族」(2022)のジュリアン・ハーシュ、音楽は「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」(2016)のブリュノ・クーレが担当。制作チームは、モーリーン・カーニーに脚本を提出し、彼女の納得がいくまでやり取りし、承諾を得た後に撮影に入った。
ジャン=ポール・サロメ監督は、容赦ない暴力と権力の中枢にある闇の真相やそれがもたらす政治的、経済的危機より、1人の人間であり、女性であるモーリーンが内面に得た傷、彼女の家族が直面したこと、利権と利益に固執するマッチョな保守派にとってなぜ彼女が排除すべき存在となったか、そして最悪の状況からなぜ彼女は立ち直ることができたのかを描くことに、重きを置いた。
映画には、仏最大の電力会社EDFや総合原子力企業アレバ社のCEOから当時の経済大臣アルノー・モンテブールまで、背景にあるだろう国家的スキャンダルに関与するプレイヤーが実名で登場する。にもかかわらず、政治的な映画であることよりも、モーリーンの痛みと並走したという印象が強く残るのはそのせいだ。
たぐいまれな知性と努力でアレバ社の労働組合のトップに就いたモーリーンは、正義を信じ、大勢の前で怯まずCEOを糾弾するなど率直に活動したあげく、邪魔者扱いされて地位を追われた上、暴力的な凌辱を受けて心神喪失したところに、尊厳を奪って事件を捏造され、犯罪者の汚名を着せられる。不条理ともいえるこの状況をサロメ監督は、「モーリーンがどのように耐えきったのか」という観点から描いた。
元アレバ社CEOでモーリーンの盟友だったアンヌ・ロベルジョンをマリナ・フォイスが、アンヌ・ロベルジョンの後任となったCEOリュック・ウルセルをイヴァン・アタルが、モーリーンの夫ジルをグレゴリー・ガドゥボアが演じている。
第79回ヴェネチア国際映画祭 労働・環境人材育成財団賞受賞。
CAST
モーリーン・カーニー:イザベル・ユペール(Isabelle Huppert)
夫のジル・ユーゴ:グレゴリー・ガドゥボア(Grégory Gadebois)
ジャン・ピエール:フランソワ=グザヴィエ・ドゥメゾン(François-Xavier Demaison)
ブレモン曹長:ピエール・ドゥラドンシャン(Pierre Deladonchamps)
ジュリー:アレクサンドリア・マリア・ララ(Alexandra Maria Lara)
弁護士:ジル・コーエン(Gilles Cohen)
アンヌ・ロヴェルジョン:マリナ・フォイス(Marina Fois)
リュック・ウルセル:イヴァン・アタル(Yvan Attal)
イザベル・ユペール(Isabelle Huppert)
1953年3月16日、フランス・パリ出身。ヴェルサイユ音楽院、パリ国立高等音楽・舞踊学校などで演技を学ぶ。英語、イタリア語、ロシア語が堪能。1972年「夏の日のフォスティーヌ」で映画デビュー。「アロイーズ」(1975)でセザール賞助演女優賞にノミネートされて以降、注目度を高め、数々の作家との仕事で成功を収めてきた。「レースを編む女」(1977)で英BAFTAと伊ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞の外国人女優賞を受賞。
以後、初主演映画となったクロード・シャブロル監督「ヴィオレット・ノジエール」(1978)でカンヌ国際映画祭女優賞、クロード・シャブロル監督「主婦マリーがしたこと」(1988)でヴェネチア国際映画祭女優賞、「沈黙の女/ロウフィールド館の惨劇」(1995)でヴェネチア国際映画祭女優賞、ミヒャエル・ハネケ監督「ピアニスト」(2001)でカンヌ国際映画祭女優賞、フランソワ・オゾン監督「8人の女たち」(2002)でベルリン国際映画祭銀熊賞(芸術貢献賞)を受賞。ポール・ヴァーホーヴェン監督「エルELLE」(2016)ではアカデミー賞主演女優賞にノミネートされた。
ジャン=リュック・ゴダール監督「勝手に逃げろ/人生」(1979)、マイケル・チミノ監督「天国の門」(1980)、ジャン=リュック・ゴダール監督「パッション」(1982)、ディアーヌ・キュリス監督「女ともだち」(1983)などに参加した後、1978年以降は仕事のペースを押さえ、1985年から88年は海外での仕事を増やした。
主な作品に、クロード・シャブロル監督「ボヴァリー夫人」(1991)、ハル・ハートリー監督「愛・アマチュア」(1994)、ミヒャエル・ハネケ監督「愛、アムール」(2012)、ホン・サンス監督「3人のアンヌ」(2012)、ミア・ハンセン=ラヴ監督「未来よ こんにちは」(2016)、ミヒャエル・ハネケ監督「ハッピーエンド」(2017)、ブノワ・ジャコー監督「エヴァ」(2018)、ニール・ジョーダン監督「グレタ GRETA」(2018)、アイラ・サックス監督「ポルトガル、夏の終わり」(2019)、イエジー・スコリモフスキ監督「EO イーオー」(2022)などがある。
2009年、レジオンドヌール勲章受章。同年、カンヌ国際映画祭コンペ部門の審査委員長、2021年には東京国際映画祭コンペ部門で審査員長を務めている。
また2022年9月には、コロナ禍で延期になっていた、イヴォ・ヴァン・ホーヴェ演出の舞台「ガラスの動物園」で、来日公演を果たした。
STAFF
監督:ジャン=ポール・サロメ(Jean-Paul Salomé)
脚本:ジャン=ポール・サロメ&ファデット・ドゥルアール(Jean-Paul Salomé & Fadette Drouard)
プロデューサー:ベルトラン・フェヴル(Bertrand Faivre)
編集:ヴァレリー・ドゥセーヌ&アン・ヴァレ(Valérie Deseine & Aïn Varet)
撮影:ジュリエン・イアーシュ(Julien Hirsch, AFC)
照明:クリストフ・デュロイオーム(Christophe Duroyaume)
録音:クリストフ・シリング(Christoph Schilling)、クリストフSルイ・バートChristoph S Louis Bart)、
ダミアン・ギュローメ(Damien Guillaume)、マルク・ドゥスネ(Marc Doisne)、
トーマス・ワグニィ・ドリーグ(Thomas Wargny Drieghe)
美術:フランソワーズ・デュペルテュイ(Françoise Dupertuis)
衣裳:マルテ・クタール(Marité Coutard)
音楽:ブリュノ・クーレ(Bruno Coulais)
宣伝/紙・電波:サルーテ、和氣道子、フェルシュ、播磨多佳子
WEB:ポイント・セット、喜屋武健一朗
営業:トリプルアップ(島崎良一)
配給:オンリー・ハーツ
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
原作:カロリーヌ・ミシェル=アギーレ著「LA SYNDICALISTE:組合活動家」(原題:LA SYNDICALISTE)
原語:フランス語・英語・ハンガリー語
2022年 / フランス・ドイツ / 121分 / 1:2.35 / 5.1ch
© 2022 le Bureau Films - Heimatfilm GmbH + CO KG – France 2 Cinéma